【企・雪集】真っ白な二人
『あの頃は俺、毎日バイトしてたし。こうしてゆっくり話すこともなかなかなかったよな』
「おじさん、かなりの資産家だったっけ?」
『あ、それ聞いたんだ?』
余計なこと聞いちゃったかな。
家庭のことだし。
『おじさんとおばさんはほんとにいい人だよ。感謝してもしきれねえんだ。
あの時、引き取って貰ってなかったら俺、今頃生きてなかったかもしれない』
「ーーうん」
あたしは頷くしかできなかった。
それ以上何も聞かなかったし、彼ももう何も言わなかった。
彼は一体何を言いたくて、あたしに声をかけたんだろう。
聞きたいけど、聞けない。
聞いたらいけない気がして。
『あのさ、今日から一週間。一週間だけでいいんだけど、一緒に帰らない?』
「はい?」
突然の言葉にびっくりして。
思わず変な声が出た。
えっと、なんでかな?
どうして?
そう思ったけど、それは声になっていなくて。
だけど、あたしは頷いてた。
首は、動いてたの。
ねえ、譲。
本当になにを考えてるの?