透明なカケラ、ひらひら
カレは、人一倍背が高かった。
なにを話したかは覚えてない。名前はユウキと名乗った。
「ココで自分から名前を名乗る人なんで珍しい」と笑うと、少し照れながら、こういうとこ慣れてないんだよね、と持っていたグラスを口にした。
実はお酒もニガテ、というと笑って、美味しくないような表情をわざと作って見せた。
爆音に目を細めながら、カレは私の耳元へ唇を近づけ話し出した。
「よくきてんの?オレは今日はたまたま来たって感じ。試合の後みんなで飲んで盛り上がってテンションあがって、じゃークラブ行くかー!みたいなのノリ。最初から長居はしないつもりできてたけど、ちょうどね、居心地の悪さ感じてたところだったんだ。でも来て良かった、君に会えたし。」

そういうとまっすぐに私を見つめ、少しだけ笑った。
既に私はまわり色も音も失っていることに気づいた。
ふたりだけに色がついている感覚。
彼の声だけ鮮明に鼓膜で響いた。

ドキドキが零れてしまったの?
それても気持ちが見透かさてしまった?

本当は嬉しくて「私も!」と言いたかった。
でも、ふっと笑って「ウソばっかり、イヤな男」と精一杯興味のない振りをして返事をした。



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