○'s Room
「へぇー、歌って変わった名前だな」
「うん、よく言われる」
ほかの学生とも会話をし、食事は楽しく過ぎていった。
この大学寮は、大きな寮とアットホームな小さい寮とわかれている。
女性は皆、大きな寮を選択するのが当たり前だと聞いた。
多分知らない男性と一緒に暮らすのは抵抗があるからだろう。
私は申し込みが遅かったせいか、こちらに回されたらしい。
ここに住んでいるのは、私たちを含めて10人。
女の子は私とナギだけ。
光希のおばあさんは、一緒にいるのが今日までで、私たちに
「光希をよろしくお願いします」
と言って、帰っていった。
光希はさみしくないのかな…、お母さんは…どこ?
なんとなく聞いてはいけない気がして、ただ、光希を眺めていた。
すると私の視線に気づいた光希は駆け寄ってくる。
「うた、今おれのこと見てた!」
嬉しそうに駆け寄ってくる光希が可愛くて、たちまち私は笑顔になる。
「うん、見てた。光希かわいーんだもん」
少しちゃらけて言うと、急に光希は機嫌の悪い顔になる。
「そんなのうれしくない!もう歌には教えてあげない!!」
「えぇー?気になる!ごめんね、光希」
すぐに笑顔が戻った光希はこう言った。
「今日まだ帰ってきてないやつ、歌のとなりのへやのやつなんだよー!」