○'s Room
2章 慣れ始めた生活
気になるだけ
「いってきます」
「歌ちゃん、行ってらっしゃい」
今日は1限目の講義が入っている。
急ぎ足で玄関に向かう私に御堂さんが声をかけてくれた。
なんだかお母さんみたいだ。
「うん、いってきます!」
懐かしく感じるほっこりした感じに顔が緩む。
そしてドアが閉まった後、外に聞こえるくらいの大声と階段を駆け降りる音が聞こえた。
「やっべェ──ッ!!!遅れる!」
「こら理久、静かに降りてこい」
思わずクスクス笑ってしまう。
声の主はリューちゃんですか。
「今、…──したばっかりだよ」
もうすでに歩き始めた私の耳には、御堂さんの声を正確に聞きとれなかった。
「えっ!?何でそれを早く言ってくんないの!?」
リューちゃんの声はよく聞こえた。
私は笑いながら家を出た。
大学まではさほど距離はない。
昨日のコンビニの前を通った時だった。
「歌ちゃん!!」
「ひゃあ!?」
リューちゃんだろう人の両手が私の肩に乗る。
「あ、そんなにびっくりした?ごめん、ごめん」
振り返るとやはりリューちゃんだ。
「御堂さんがさっき歌ちゃんを見送ったところだって言うからさ、走れば間に合うと思って。一緒に行こ」
さりげなく隣に並んで歩く。