○'s Room

やがて式も終わり、席を離れようとすると


「歌ちゃんの学部ってどこ?」


不意に立ち上がった私を上目遣いで見てくる理久君。

呼ばれた私は固まった。



「経営学部…」



「そっか、さすがに学部までは一緒じゃないか。俺は教育学部」


「そっかー、同じだったらよかったのにね…」



しばらくの沈黙があって、私は口を開いた。



…ってゆーか…


「その…歌ちゃん…って呼び方なんか…」


「えっ、嫌?」


「…うん。…慣れてないから変な感じする」


私は初めて呼ばれたから戸惑いを隠せなかった。

中学も高校も男子からは「浅宮さん」って呼ばれてたから。



そんな私に気づいているのか、いないのか、理久君は笑った。


「でも浅宮さん、って呼ぶと、距離が開いちゃう感じしない?」


「た…確かに」



せっかく仲良くなれたんだしね…。


すると理久君は閃いたように目を大きくさせた。



「そうだ!だったら歌ちゃんも俺の事ちゃん付けで呼んでよ。これでお互い様、ね?」




あ…そっか…。




「うん、わかった。えっと…り、りゅくちゃん」

「え…?」



か、噛んだ、噛んじゃった!



恥ずかしい思いを隠せずに、だんだん顔回りが熱くなってきた。


そこでなぜか私は意地を張ったかのように、失敗を突き通した。



「リューちゃんでいいじゃん!リューちゃん!!」




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