○'s Room
「………」
リューちゃんは私の顔をじっと見てくる。
はっと気づいて、私は聞いた。
「え、なんか付いてる?」
自分の顔を指さしながら言うと、リューちゃんが下を向いた。
え…
不覚にもポッカリと大きな穴が開くほどの衝撃をくらう。
「ちょっと頭痛いから部屋で休むわ」
ナカジに伝えて、靴をだるそうに脱いで私の横を通るとき、「ただいま」と私に呟いた。
その瞬間、ふと気づく。
耳が少し赤い。
何かあったんだ。
リューちゃんがあんな風になるのを初めて見た私。
熱のせいだったのかもしれない。
わからないけど…
すごく気になって仕方なかった。
もちろん、どっかの少女漫画のような勇気ある女性になれるわけもなく
隣の部屋に意識を向けたまま、声をかけることなくその日が終わった。
次の日は休みだった。
1日暇な私は部屋でのんびりしていた。
朝起きると御堂さんは用事でいないし、光希は幼稚園。
他のみんなもバイトや合コンセットやらで忙しそうだった。
1階でいれた紅茶を飲みながら、ノートパソコンを触っていると、
「お前、合コン来ねぇ?」
寮内でのお誘いが聞こえる。
寮といえる大きさじゃないので、廊下で話してれば、どこにでも大抵聞こえる。
「あーぁ、先輩…俺はまだ早いよ?今はそういうの興味ないんで遠慮します」
誘われているのはおそらくリューちゃん。
機嫌がいいのか、誘いは断っている。
相手もそうだよな、と相づちを打ってさわやかに帰っていったみたいだ。