○'s Room


「ふーん…」



ふーん、って…


心なしか、うつ向いて水の入ったコップを掴むリューちゃんの顔は少し笑っていた。



「この間歌ちゃんと帰る途中、俺に声かけてきた子いたっしょ?」


「あ、仁美ちゃん!?」


気になっていた存在の人の名前がでてきたもんだから、思いっきり大きい声で聞き返してしまった。



よく覚えてんねー、と笑ながら言われた。


う…やってしまった…。



恥ずかしくて少し下を向いた時、



「あの子さ、俺に気があるから食事くらい一緒に!って言ってきて」


ゴフ…


「ぐ……ゴホ、ゲホゴホッ…!!」


「うわ、歌ちゃん、大丈夫っ!?」

また飲みかけの水でむせる。




やっぱり告白されたんだ!
だからあの日帰ってくるのが遅かったんだ!!!



…私に勝ち目なし、か。



「もう、大丈夫…」


「そんなこと言いながら、今度は元気なくなってない?」



だって…告白されて、付き合ったんでしょ?


のろけを聞かされる羽目になるとは。

よりによって本人から。



「結局、食べに行く羽目になってさ…」


ん?

今度はリューちゃんの声のトーンが下がった。

のろけじゃない…?


「食後の会計で、財布みたら金がピッタリしか入ってなくてさ。帰りのバス賃もいるから、残りの少しの代金は出してもらいたくて、ごめんって言ったら」


「言ったら…?」




リューちゃんが急にへらっと笑う。


「"男が女に払わせるの!?ありえない!!"って言われちゃった」



へらっと笑う力ない笑顔を見てると、その時彼が傷ついていたのが目に見えた。

リューちゃんをこんな顔にさせた女にイラつく。


「リューちゃんほど気前いい人、なかなかいないのにね。仁美ちゃん、勿体ないことするなぁ」



< 35 / 42 >

この作品をシェア

pagetop