○'s Room
「ふーん…」
ふーん、って…
心なしか、うつ向いて水の入ったコップを掴むリューちゃんの顔は少し笑っていた。
「この間歌ちゃんと帰る途中、俺に声かけてきた子いたっしょ?」
「あ、仁美ちゃん!?」
気になっていた存在の人の名前がでてきたもんだから、思いっきり大きい声で聞き返してしまった。
よく覚えてんねー、と笑ながら言われた。
う…やってしまった…。
恥ずかしくて少し下を向いた時、
「あの子さ、俺に気があるから食事くらい一緒に!って言ってきて」
ゴフ…
「ぐ……ゴホ、ゲホゴホッ…!!」
「うわ、歌ちゃん、大丈夫っ!?」
また飲みかけの水でむせる。
やっぱり告白されたんだ!
だからあの日帰ってくるのが遅かったんだ!!!
…私に勝ち目なし、か。
「もう、大丈夫…」
「そんなこと言いながら、今度は元気なくなってない?」
だって…告白されて、付き合ったんでしょ?
のろけを聞かされる羽目になるとは。
よりによって本人から。
「結局、食べに行く羽目になってさ…」
ん?
今度はリューちゃんの声のトーンが下がった。
のろけじゃない…?
「食後の会計で、財布みたら金がピッタリしか入ってなくてさ。帰りのバス賃もいるから、残りの少しの代金は出してもらいたくて、ごめんって言ったら」
「言ったら…?」
リューちゃんが急にへらっと笑う。
「"男が女に払わせるの!?ありえない!!"って言われちゃった」
へらっと笑う力ない笑顔を見てると、その時彼が傷ついていたのが目に見えた。
リューちゃんをこんな顔にさせた女にイラつく。
「リューちゃんほど気前いい人、なかなかいないのにね。仁美ちゃん、勿体ないことするなぁ」