○'s Room
さっきまでキョトンとしていた理久君もすぐに明るい笑顔に戻る。
「リューちゃんかぁ、なんか呼ばれた事ないあだ名だから新鮮」
「だよね!」
…バレなかった…。
その事に笑いを堪えながら、理久君改め、リューちゃんとはその場で別れた。
そして次に向かう先は学生寮だ。
地図を持って探してみるが、方向音痴なせいかなかなか見つからない。
「あれ?確かあっちの踏切を渡って……ん?」
地図とにらめっこしていると、横をふわっといいにおいを漂わせた人が通った。
顔を上げると、女の人。
なんか優しそうだし、聞いてみようかな…
「あの…すいません、この近くにある大学の学生寮知りませんか?」
すると、ふいっと無視して行ってしまった。
ありゃ…人選び失敗。
残念に思いながら、道を歩き回った。
20分たってもまだ着かなくて、かなり焦り始めた私。
すると急に後ろから声が聞こえた。
が、振り向いたら誰もいない。
下の方から、ふぇ…と子供の泣きそうな声がした。
足元を見ると、涙目の男の子がいた。
「どーしたの?」
私がしゃがむとその子の顔はくしゃっと歪む。
そして駆け出した。
勢いをつけすぎたせいか、フラついて転けそうになった所で、しっかり体を受け止める事が出来た。
「…よかった……だいじょうぶ?」
次は静かな声で聞いてみた。
さっきは声が大きかったから、ビックリして泣いたんだよね?
よしよしと体を揺らしてやると、私の服を掴んで泣き出した。
それは心を許してくれた証拠。