○'s Room
本当はすごくドキドキした。
リューちゃんの名前を呼べたのは奇跡に近い。
声が出ないくらいドキドキした。
しばらく2人とも全くしゃべらなくて。
そんな時間でさえも大切で、ずっとこのままでいたかった。
「…歌ちゃん…」
不意にリューちゃんが呟く。
その声に私は少し下を向いた。
だいたい察しがつく。
少しの態度であっても、相手の変化には気づく。
私達の間には絆が働いているのは確かだ。
「…ごめん」
ポツリと出てきた言葉。
私は首を横にふった。
すごく嬉しかった。
やっぱ嫌われた訳じゃなくて
リューちゃんが私との絆にひびを入れたくない、と思っているのが伝わってきた。
ただ、「ごめん」、の前に「視線逸らしたり、避けちゃって…」くらい付けてくれたってよかったんだけど。
きっと照れ臭かったんだろうなぁ…
そう思うと、急に笑が込み上げてきた。
「ふっ…あはは」
「笑うな、真剣だったのに」
「ごめん、でも…ふふ」
笑われるのが堪えきれないのか、リューちゃんが視線をさ迷わせている。
一方の私は、嬉しさで笑っていた。
「─っ、歌ちゃん!」
我慢できないと言うように私の名前を呼んだ。