○'s Room
気を引かれて私はリューちゃんを見上げた。
「…」
あれ、何で黙るんだろ?
黙られるとこっちは緊張しちゃうのに!
「リューちゃん?」
「歌ちゃん、俺…」
なんだか分からないが、かなり真剣な表情を前に
私は笑うことが出来なかった。
真っ白になった私の頭に響くドクドクと鳴る早い鼓動。
リューちゃんに聞こえてるんじゃないだろうか。
「……妬いたのかも」
「ぇ…」
はっきりと聞こえたリューちゃんの言葉。
やく…?
首をひねった瞬間、ただならぬ焦げ臭い匂いが鼻をついた。
それに思わず鼻を押さえる私。
「…なんか、焦げ臭い?」
「あ、…」
リューちゃんは思い出したように苦い顔をした。
「リューちゃん、何かしたの?」
「腹減ったから食パン焼いた」
私の問いかけに答えたのはリューちゃんじゃなかった。
「あれ?了さん?」
眠気眼で目を擦りながらユラリと現れたのは了さんだった。
「あー…、すいません。俺勝手にいなくなっちゃって」
少し頭を下げて了さんに謝ったリューちゃん。
戸惑う私にリューちゃんが説明する。
「さっきキッチンで了さんに会ったから、パン食べたら?って勧めたのはいいけど…」
「こいつ勝手に居なくなってたから、焼き時間設定間違えた…」
了さん、明らかに料理不得意そうだもんね…。
それでこんな焦げ臭いのか。
「だからリューちゃん、"焼いたのかも"って言ったのか。ちゃんと居なきゃダメじゃん、リューちゃん」
私は可笑しくなってリューちゃんの肩を叩いて笑った。
「えっ、違っ…そーいう意味じゃ…」
「ん?」
「あ…いや、なんでもない」
聞き返した私にリューちゃんは笑顔を返してそう言った。