ジェミニ
ジェミニ
「ほら見て。オーロラ!」

ポルックスはそう言って、
無邪気に笑いながら、
頭上に広がる宇宙に
手を伸ばしました。

「もう別に珍しくも
ないじゃないか。」

カストルは
そんなポルックスを
羨ましく想いながら
ただ愛想の無い
返事をするだけでした。

「えへへ。」

カストルとポルックスは
たった二人だけの家族。

誰も居ない朝も昼も
なくなった世界の
たった二人の兄弟。

血の繋がらない
でも心は繋がっている、
たった二人の兄弟。

「あれはたしか
太陽風とか宇宙線が
地球の大気かなんかに
ぶつかってああなるんだ。」

「兄ちゃん物知りだね!」

ポルックスはいつも
何を見ても何を聞いても
目を輝かせては
ニコニコしていました。

そんなポルックスに
カストルはどうしても
伝えなければいけない事が
口に出来ないのでした。
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