ジェミニ
「ねぇポルックス。
父さんや母さん、友達が、
みんな何処に行って
しまったか分かるかい?」

「うん。前に本で
見た事あるから知ってるよ!
お父さんもお母さんも
みんなお星さまに
なったんだって。」

カストルはまた
その純粋さに
心を締め付けられながらも
ゆっくり時間をかけて
心を言葉にしていきました。

「もし。もし僕も。
星になったら
ポルックスは寂しいかい?」




二人はしばらく
黙り込んだまま
身動きもせず
ただ時間が過ぎるのを
待っているようでした。

「僕は、多分あと少しで
星になると思うんだ。」

そう言ってカストルは
マフラーと手袋を外して
無数の赤黒いアザを
ポルックスに見せました。

「本当はもう
何も分からないし
殆ど何も感じないんだ。
何を綺麗と想う事も無いし
何を恐ろしいと想う事も無い」

カストルは微かに
心に痛みを感じながら、
たった一人にしてしまう
弟の事だけが
気がかりでなりませんでした。

「……大丈夫だよ!
兄ちゃん。」

そう言ってポルックスは
自分のセーターを捲り、
いつもと変わらない笑顔で
カストルに
お腹を見せました。
そこにはカストルと
同じ様に無数の
赤黒いアザがありました。

「だから、これからも
家族だろ?兄ちゃん。」

ポルックスの顔には
微かな恐怖や
不安がありましたが
それでも
ポルックスは笑顔を
絶やしませんでした。

「あぁ。これからも
ずっと一緒だよ。」

カストルとポルックスは
手をつなぎ、
草原に寝そべりながら
天を見上げました。

「ほら見て。流れ星!」

「……綺麗だね。」

満天の星空に流れる
たくさんの星達は
まるで天が
泣いているようでした。
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