隣人は変人です
「葵。今回はありがとう。素晴らしい出来になったよ」
上司の清水さんが彼女に挨拶してる。
じゃあ、彼女が"あおいさん"なの?
何で葵ちゃんと同じ名前なの?
「ところで肝心の浩介(コウスケ)はどうしたんだ?」
あおいさんは、困ったような顔をしていた。
「またか?」
「ええ」
周りは訳も分からないまま、このやり取りを見ていた。
「では。試作品の御披露目会を始めます。
まずは、この方は葵カナさんだ。
デザインしたのは、弟の浩介くんなんだが、こういった場が苦手でな。
今日は欠席だそうだ」
え?
弟の浩介さん?
「この度はおめでとうございます。私どものデザインが…」
それからの御披露目会はちゃんと続いてはいたけれど、私は何だかぼんやりと聞いていた。
彼女も"葵さん"だった。葵ちゃんも"葵"だ。
え?
どういう事なんだろう。
何だか考えすぎて頭がおかしくなりそうだ。
今日は早く帰って、ゆっくりお風呂に入って、早く寝よう。
うん。
そうしよう。