隣人は変人です
「春花ちゃん、そのストラップかわいいじゃん」
テーブルの上に置いてある携帯のストラップに気付いたらしい。
「自分で買いなよ。あげないからね」
「え~ケチ」
体をわざとらしくクネクネさせる葵ちゃんはイケメンな変人だけど、憎めないかわいさだった。
「どこに売ってたの?」
「原宿の雑貨屋さん」
「ハタチにもなって、春花ちゃんは原宿好きだよねぇ」
「まっ、ね」
私はそれ以上何も言わなかったし、彼も聞いては来ない。多分私は原宿好きのフリーターだと思われてるから。
お互い薄いベールで素性を隠した、なんちゃって友達。
私達は不思議な関係だけど、私は彼の持つ雰囲気に圧倒されながらも、この何とも言えない微妙な関係が結構好きだった。
「あの、ペンケースもかわいい~」
葵さん。語尾にハートマークが見えるよ。
「あげないよ」
私がギロっと睨めつけると
「分かってるよ。怖いなぁ」
と、降参のジェスチャーをするから、私はおかしくて大笑いした。
私の部屋のお隣さんは、本当に不思議な人だった。