隣人は変人です


「買っちゃった」

帰りの電車の中。

私は自分の行動にちょっとドキドキしてた。

私の手元には、さっきの女子高生グループが見ていたのと、同じ箸がある。

だってね。
何故か? 葵ちゃんの喜ぶ顔が浮かんだんだもん。

いつも私のを欲しがるから。

ただのお土産だから。

決して、お揃いにしたかった訳じゃないから。

私はひたすら頭の中で否定し続けてた。

アレ?
もしかして?
私はあの"キャラ好きセクハラ親父"が気になるの?

意識したら、急にドキドキが増した気がした。

え?
私ってば、好きになっちゃったの~?

え~!
どこが?
どんなところが?

自分で考えてもよく分かんない。意味不明だ。

でも。
きゃ~、どうしよう。
これから変に意識しちゃうかも。

何故あのアパートに住んでるの?
彼は昼間何をしてるんだろう?
名字も知らない。

改めて考えると、私は彼の事何も知らないんだ。

いけない。
彼の事をもっと知りたくなってしまった。

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