S・S・S
新人(あたし)の教育係は
常に、リーダーのトウマだ。
「… 朝イチは、特にだ。まぁ、お前の場合、客のテンション上げるのは得意だから、それは誉めてやってもいいけど。ただ、いつも自分が盛り上がりすぎて、マストな要素をすっ飛ばすのが悪い癖だな。」
「はい…おっしゃる通りです…」
濡れたような黒い瞳。
まっすぐに、トウマはあたしを見る。
その、甘いルックスや声とは裏腹に、口から出る言葉に容赦はない。
「お前、反省会(コレ)終わったら、残って明日のQシート作ってけよ。」
「えー!!なんであたしだけ……」
Qシートというのは、番組の細かい進行表のこと。
DJ初心者のあたしは、
予め1から10まで全部決めておかないと、明日また上手く喋れない、ということだ。
「――…なんだ? …サラ。」
不意に
低く呼びすてにされた自分の名前に
心臓が跳ねた。
―――… もう。ズルい。
トウマは、知ってる。
あたしが、こうやって呼ばれたら、逆らえないってこと。
「…… なんでも、ありませんっ!」
今日も
逆らいつつ惹かれていくあたしは、
まったく、どうしようもない女だ。