S・S・S









「そろそろお昼も近くなってきました、私、サラとはまた明日♪」




――――――…背中が、寒い。






魔法は、要らないと言った。

トウマからの信頼だけで、頑張れるって、

昨日、サエさんと話してて、そう思った。







――… けれど

あたしは、ほんとうに

シュンくんに“ごめんね”って、言えるだろうか。




自分を切り売りするような

こんな、果てしない緊張感の中で


良いも悪いも丸ごと肯定してくれるシュンくんみたいな存在を…







手放すことが… できるだろうか。








――――――… 眩暈が、する。





「このあとは、お待ちかねの… DJトウマ!みんな、この後も楽しんでね♪」




なんとか気力で最後まで喋りきったけど

手も、足も、全身が震えていて。







「よく――――…、がんばったな」




ブースの出口にいたトウマが
あたしの頭に手を置いて

珍しく優しく言ったのを、覚えてる。




「サラさん!お疲れ様でした」



そしてドアの外には、
いつもと変わらないシュンくんの微笑み。

トレイには、ドーナッツとカフェオレ。






―――――… ああ、終わったん、だ・・




そう、思った瞬間、張り詰めていたものが

一気に緩んで…





ぐらり



視界が歪んだ――――――…







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