S・S・S




「もしかして、ここまで運んでくれたの?……ごめんね、重かったでしょ?」


「いえ、軽かったですよ。でも、びっくりしました。サラさん、抱き心地よくて。」


「えっ… な、なに?」




ビクン、と身体が震える。


立ち上がったシュンくんの手が伸びて来て、枕の両端が重みに沈んだ。





――…しまった。これじゃ、逃げ場がない。





シュンくんの、顔が、近くて。


微かな息遣いが、耳に触る。






「… シュン、くん?」


「早く、よくなって…サラさん、思いっきり、抱きしめたいな。」


「あ…… 」




綺麗な瞳であたしを捕える彼に

前髪をくるり、指で遊ばれて

不覚にも、心臓が跳ねてしまった。






ちょっ… 

シュンくん。

シュンくん。


ダメです。

そんな、ストレートに言わないで。




< 109 / 452 >

この作品をシェア

pagetop