S・S・S
*
『続いてのリクエストは…The Beatles! わお!懐かしいですね。曲はHello, Good bye…』
サエさんの、明るい声が室内に広がる
午後の、医務室。
少し傾いた日の差す、その空間に
埃っぽくて優しい音が流れ込んだ。
「………」
「………」
トウマは、しばらく何も言わなかった。
ただ、じっと―――… あたしを見つめていた。
ベッドの脇に立ち尽くして、あたしだけを。
その視線に晒されている時間は、とてつもなく長いような気がして
その色に、あたしはひどく戸惑っていた。
怒り、とはまた違う
不機嫌な… 苛立ちのような… そして少しの困惑。
『色恋沙汰はほどほどにしとけよ。』
そう言われたのは、ついこの間のことで。
“シュンくんと、付き合ってる”
ねぇ、トウマも、そう思ってるの?
いま、何を考えてる――…?