S・S・S
――…ちょっと、かわいそうだったかな。
トレーを片手に帰っていくシュンくんの後姿を見て、そう思った。
ワンシーズンをずっと同じ仲間と過ごす雪山のアルバイトは、それこそ、わんさか恋の山。
11月にオープンしてから1ヶ月、既にアルバイトスタッフの中にはカップルが何組か誕生している。
4日後にはクリスマスがやってくるし。
きっと来週は“祭”状態だ。
「告白とかされちゃったら、どーしよ…」
「…… どう、するんだ?」
「きゃあぁぁぁぁあぁ!!」
――… ぼーっとしてたのがいけなかった。
油断しきったところに
突然、トウマが来て、耳元で囁くから
全身の筋肉が強張った。
「なっ… なんなんですかっ!もぉ!」
「少年の心を弄んで、悪い女だなーお前…」
ニヤニヤと笑う大魔人、トウマ。
きっとお腹の中まで真っ黒に違いない。
「…… トウマさんだけには、言われたくありません。」
こんな風に
平気で、あたしの心を、弄ぶあなたに。
――… ありったけの想いを込めて、睨んでやった。
“心外だ”とでも言いたげに
トウマが眉を上げる。
「どういう意味だ、このやろ…」
――…そのまんまの意味だ、ばかやろう。