S・S・S







「トウマっ! 待ってっ……!!」


コンクリートむき出しの殺風景な空間に、あたしの声が響いた。




聞こえてるはずなのに

なおも階段を降りていこうとするトウマを、後ろから掴んで引き止めた。




ゆっくり振り返ったその瞳には、明らかに動揺の色が浮かんでいた。





――…気のせいじゃなかった。





この人、いま… 困ってる…。


でも、どうして…?




「どうして、無視するの…」


「無視なんかしてない。」


目を合わせず、そう答えるトウマ。




「嘘っ!してるじゃない!今だって…どうして、目を逸らすの?」


「………」






――… どうして?トウマ…






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