S・S・S


「―…桃井さんには、いま一度、自分のした事をよく考えて頂きましょうか。

 お客様からの応募があったにも関わらず、自分のやりたい事を優先させたという事実を…。

 全く、とんでもない事よ。

 今日はゲレンデ内だけの放送だったからまだ良かったけど、これが、公共の電波での放送だった場合でも、あなたは同じ事をするのかしら?」


「――…泉、さん…」



静かな口調だったけど、

それは、かえって
彼女の怒りの大きさを想像させた。




「私が、何故、あの時あなたを止めなかったか、分かる?

 ―…あなたが、お客様でなくスタッフを優先させるのに、何かよほどの理由があるのかと思ったのよ。何か、別の企画とかね。けど…自分がそうしたいから、なんて。話にならなかったわね。」


「そんな…」


「安藤さんが、正しいわ。桃井さんは、プロとしての自覚が足りない。

 いえ…そもそも、自覚が備わっているとは、思えないわ。

 うちの局で同じことやったら、即刻クビよ。次の日から降ろすわよ…誰がやらなくても、私が。…現場を、あまり甘く見ないで欲しいわね。」


冷ややかな視線をモモに送る泉さん。


ううっ……怖い…。

美人が怒ると、怖いんだなぁ…


しかし、さすが、烈火さんの秘書だ。
迫力が、半端じゃない。



モモが、ヘビに睨まれた蛙のようにその場に固まっていた。







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