S・S・S
――…ねぇ、トウマ、でも…
「Sarah…」
撫でられるあたしの髪は、トウマの指に従順に絡みつく。
さらさらと、気持ちいい。
でもどうして、彼の手つきは…こんなに慣れているのだろう。まるで、何十年も繰り返してきたように。何の気負いもなく、自然に…―
…気付かなければ、よかった。
―――…トウマ…
どうして、そう感じたのだろう。
理屈ではもう説明できないけれど、でも―…
―――…誰かを…見てる…?
あたしじゃない、誰かを。
その、視線の向こうに。
その、慣れた手つきで
他の誰かを、撫でて、いた―…?