S・S・S




――…そういえば、前にもあったな、こんなこと…



…そう、あの深夜の露天風呂だ。


寝ぼけながら、だけど

あなた確かに「Sarah…」―…そう言った。





あなたが、私の髪を撫でるとき。

私を「サラ」ではなく「Sarah」と呼ぶとき。



あたしじゃない、誰かを―…その胸に、浮かべていませんか。



遠く、懐かしむように。

愛おしいものを見るように。


あなたは、あたしを、見る―…


一体、誰を?




「Sarah」という名の、

あたしじゃない、誰かが

あなたの、胸の奥の

とても柔らかいところに

確かに、いる――…







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