S・S・S



───…


どこからともなく、拍手が起こった。

はじめは静かに、だんだん大きく。
最後は声を上げて。

みんなが、笑顔だった。

奏さんと明ちゃんだけでなく、放送を聴いていた人みんなが笑顔でふたりを祝福していた。

なんて、あたたかい空気。

昔、ゲレンデが溶けるほど恋がしたい、なんて歌があったけど今日のシラカワはまさにそんな雰囲気だ。白銀のゲレンデに降り注ぐ陽光。誕生したばかりの初々しいカップル。それをみんなの笑顔がやわらかく包んでいる。


ああ、なんていい日なんだろう。

そしてここは、なんて温かい場所なんだろう。


…「好き」って、良い言葉だな。
たった2音、だけど。
発するまでにどれほどの葛藤があっただろう。ふたりに、どんな物語があったんだろう。お互いの2音が交わるまで。

頬を染めて恥じらいながら奏さんと微笑みあう明ちゃんを見ていたら、胸が詰まってもう言葉にならなかった。




そう、もう

、、、、、、、、、
言葉にならなかったのだ……──



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