S・S・S
「烈火さんからの斡旋というか、紹介だけどな。あの人も昔から結構本格的にスキーやってて、NIS-FMがいまスキー場を運営してるのだって、烈火さんがいるからなんだぜ。」
「…へぇ、あ、そっか。だからこないだのログハウスも…」
烈火さんとトウマの隠れ家って言ってたあそこは…
「あそこはもともと地熱発電の実験施設として建てられたもので、それを地元の工務店の好意で貸してもらってるんだ。そこのスキーチームと付き合いがある関係で。日帰りでこっち来る時もあるから、シーズン中はよく利用させてもらってる。」
「ふわぁ…なんか、なんか…」
すごい。どんどんトウマのバックグラウンドが広がっていく。
「そっか。トウマがゲレンデに来てDJをしてるのって、局の都合ってだけじゃないんだね。もともとの付き合いがあったんだ。」
「一応はな。スキー業界にも顔が利くお陰でウィンターシーズンの広告も取ってこれる。お前も、これから喋りで食ってくつもりなら覚えておけ。なにかひとつで良いから、得意分野があると有利だぞ。自分でスポンサー契約を取って来れれば、首を切られることも少ないしな。」
「すぽんさー…」
「まぁ、まだいいさ。そこまではな。」
ふっとトウマの目元が緩んだ。
「ただ、意識だけはしておけ。烈火さんはお前を局に迎える気満々みたいだから。具体的な話はまだ聞いていないが、4月の頭から番組を持つようなことになれば、頼まれもしないのに有象無象の輩がお前に近付いてくるだろう。その中で、自分の興味のあることに関してはどんどん人脈を広げていけばいい。次の仕事に繋がる。だが、人を選んで付き合わないと痛い目を見るぞ。…今回のことでも、だいぶ懲りてると思うが。」
「は…い…」
これからのこと。仕事のこと。
思えば、トウマとこんなに真剣に話すのは初めてかもしれない。
4月なんてずっと先の話だと思っていたけれど、あと3ヶ月もないんだ。早いなぁ…。