S・S・S





そんな風に悶々としながらも、あたしは4月に向けてやらなきゃいけないことが沢山あった。大学の卒業に必要な単位は前期までに取っちゃったから、こうして冬の間は雪山バイトな励んでるわけなんだけど、さすがにゼミでお世話になった教授に挨拶くらいしたいし。とりあえず電話をしたら、山を降りたら早いうちに一度顔を見せに来なさいって。卒業式は3月1日だそうだ。…ってこれ、出られるのかな、あたし。(でも出たい)

それから、あたしと交代で入る新しいDJの子にここのやり方を引き継ぐことも、しなくてはならない仕事のうちの一つだった。

新人といっても素人学生のあたしと違ってあちらはプロの喋り手さんだから、しゃべることに関してあたしが教えることなんて何もない。でも、メンバーを一通り紹介したりCDラックの並びを説明したり、スキー場の各施設に挨拶まわりをするだけでも結構な時間を取られた。


着々と進んでいく
終わりのための、
お別れのための、支度。



それはつまり

あの人との、お別れでも…あるんだ。



その日が、すぐそこに迫っている。


でも

このまま、ここを去るのはイヤ。
このままでは、終われない。

恋人になんて
なれなくて、いい。

……って言ったら嘘になるけど。



でも、せめて、気持ちだけは、伝えたい。



そのためには、まず…



「…来たね。」

ホテルのデラックスルームをひとりで占拠しているこのスキンヘッドのおっさんに、話をしなくては。




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