S・S・S
「そろそろ、来る頃だと思ってたよ。」
「…烈火さん。」
暖炉の火が彼の横顔を紅く照らし、絨毯を敷き詰めた床にゆらゆらと影を落とす。もちろん、烈火さんの右手にはでっぷりとしたグラス。ソファの脇に佇む黒服のバトラーにそれを差し出せば、ボルドー色の液体をなみなみと注いでいる。(て、ゆーか誰あれ。なにこの王族のような暮らしっぷり。どんなスペシャル待遇だってのよぉっ!)
実に美味しそうにそれを嚥下した烈火さんは、ゆっくりと息を吐きながらあたしに言った。
「わたしもそろそろ東京に戻らなくてはいけないんだ。4月からの大幅な改編に向けての準備作業が山ほどある。ここで君たちと遊んでいる時間はほんとうに楽しかったが…」
「…(遊んでってオイ) あの…」
「ん?どうしたんだい?」
「烈火さん、普通にしゃべれるんですね…」
「いまはオフだからNE。モードを切り替えれば簡単だYO!」
「ぷっ…」
まったく、この人はどこまでもふざけてるわ。でも、そこが食えないところであり、魅力なんだろうな。
「キミ、もういいよ」と言って黒服を部屋から追い出し、烈火さんは改めてあたしに水を向けた。
「さて、君の話を聞こうか。」
口角が上がっていても、目が、笑っていない。
くそう、負けるもんか。
「烈火さんが言っていた…“安藤サラに手を出すな”って、どういう意味なんですか?」