S・S・S






ちょうどお昼、正午から午後4時までの4時間。それがあたしに与えられたここでの最後の時間だった。
通常はひとり2時間の番組担当なのに。ラストだからって、特別にふた枠もらえた。さらに本社のラジオ局と回線を繋いでの中継まで用意されていた。

たかだかアルバイトの学生DJに、一体どんな特別待遇なんだろう。

本番5分前。DJブースの定位置に座って思わずそう呟いたら、


「ばーか。お前が4月から新人アナウンサーとしてNISに入社することが決まってるからだ。もう、今日からお前のプロモーションは始まってんだよ。自覚しろ、それくらい。」


いつもの通り、絶対零度の指摘が背中で響いた。

「…そ、そっかぁ。そうですねっ。ははっ。なななんか、プレッシャーですけど…がんばりますっ。」


後ろを振り返れない。
トウマが話しているのに。


それに…

どうしよう。

あたし、
身体が、カチンコチンだ。

ヘッドフォンをセットする指先も、唇も、小刻みに震えてる。


ああ、どうしよう。
これで、最後なのに。

ここに来てなに緊張してんだコラ。
あたし!!しっかりせんかーーーーっ!!



< 409 / 452 >

この作品をシェア

pagetop