S・S・S
「……“と、いうことで”って、2回も言ってたぞ、お前。」
営業スマイル全開で手を振り返すあたしに
ゲレンデの空気よりも冷たい、無情な指摘の声が降りてきた。
「あと、オープニングトークで“眩しい”って言うなら、ついでにお客さんに“だから、ちゃんとゴーグルしてくださいね”って、注意喚起も入れろよ。」
今日は朝の担当だから!と、無理矢理上げたテンションを、あっさり撃沈させる、この男…
「ついでに、ゴーグル持ってない客に、ショップ販売の案内まで入れられれば、合格。」
「!!!」
―…あぁ、マルーン5が終わっちゃう…
「あのー… サラちゃん、次の曲いっちゃうけど、いい?」
「……ごめん、大崎くん、繋げといて。」
「了解。」
手馴れた様子で機械操作する大崎くんを横目に、恨めしげに“彼”を見つめた。
「すみませんでした… 気をつけます!」
壁際のソファで腕組みしながら
あたしのトークに文句をつける
スペシャルな態度のこの男こそ。
かの有名な――…
カリスマDJ、トウマである。
「あと、一番大事なもんが抜けてたぞ。アホか、お前は。DJ失格。」
きょとん、とするあたしをチラッと見やって、彼はため息混じりに言った。
「放送局名(ステーションネーム)!
…“S・S(エスエス)・ステーション”!」