S・S・S
「…トウマっ!」
息も絶え絶えに抵抗するあたしに
続いてトウマが甘く囁いたひとことに
きゅん、とするどころか
プチン、と切れてしまったあたしは…
少女小説の主人公、失格でしょうか。
「My sweet…, Don’t be nervous…」
――…なにが、“マイ・スウィート”だコラ…
「にっ…… 日本語で言えーーー!!!!!」
クリーンヒット。
パァン!と
小気味のいい破裂音がひとつ
綺麗に、夜空に吸い込まれていった。
*
かくして、甘い夜は更ける。
赤い、2つの爪痕を残して。
トウマの頬の、赤い手形と
あたしの首筋の、赤い花びら。
それは、消えない証拠となって
翌日から
新たな紛争の種となったのである。