幸せの在りか
「…分かったよ。行くよ、行けばいいんでしょ!?」
そう言って立ち上がると、今度は誠が「はい。」て言って手を差し出した。
「何よ、この手。何も持ってないよ私。」
「手、貸してみろ。」
「?」
そっと手を乗せた。その手をギュッと握りしめて、
「あー、やっぱり。こんな冷たくなっちゃって。」
誠は私の手を握ったまま、自分のジャケットのポケットに手を突っ込んだ。
「いいよ、自分のポケットに…。」
その時ポケットの中で手を離すと、私の手に暖かいものが触れた。
「カイロ。やるよ。」
カイロを握った手を、もう一度誠の大きな手が包み込んだ。