幸せの在りか
「…あんたさ、そんなに力入れたら痛いと思うけど…。手の色変わってんじゃん。離してやってよ。」
「お前、誰だよ。俺の妹どうしようが、俺の勝手だろ。」
「悪いけど、今は俺の連れだから。話があるならまた日を改めて、こいつの承諾取ってからにしてよ。」
口調は穏やかだけど、目は相手をじっと見据えて、瞬きもせず睨み合ったままだ。
異様な雰囲気に回りにいた人が気付いて、ザワザワし始めた。
誰かが呼んだのか警備のおじさんが、
「どうかしたんですか?」
と声を掛けてきた。
途端、「何でもありませんよ。」と手を離した男。
その隙に、「お騒がせしてすみません。」とさっさと店を出た。