幸せの在りか
誠の家とは反対方向。
こんな知らない道を行かれたら、方向オンチの私は必ず迷子になってしまう。
何とか目印になるようなものを覚えようと必死だった。
キキーッ。ブレーキの音と共に自転車が止まった。
「ここ…どこ?」
「俺ん家。」
「え…。」
一歩下がった。と、中田圭一は一歩近付く。
「そんな警戒しなくていいよ。何もしやしないって。昔話がしたくなってね。上がって。」
躊躇いがちに家に入った。
部屋に案内されても、体は硬いままだった。
もう、5時を過ぎた。誠が心配しているような気がして…早く帰りたい。