笑顔

『いらっしゃーい。』


店員さんに軽く頭を下げながらカウンターに座った。


昨日来た時と何も変わらない雰囲気なのに、私だけ場違いな気がした。


頼んだカクテルのマドラーをクルクル回しながら考えたくも無いのに考えてる。


もしも…

何て今更なのにね。


お互いに思いやれなかった結果なのに、まだ納得しきれない女々しい私。
こんなウジウジしてんのヤなのに…


カクテルをクイッと一気に喉に流し込んだ。



『変な飲み方してんじゃねぇよ。』


突然掛けられた声にビックリして振り向くと、私の横に佐野さんが座っていた。


『カクテルはそうやって飲むもんじゃないだろ。それに、女独りで自棄酒なんてみっともねぇよ。』


「うるさい。何をどう飲もうと私の勝手でしょ?それにあなたには関係ないじゃない。」


八つ当たり。

分かってる。彼が言ってることは間違ってない。いつも私が思ってる事だから。まさか自分がそうなるとは思ってなかったけど。


でも今は無理。

何かにすがっていたい。

忘れたい。


だから…



「ほっといて。」
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