笑顔
どの位時間が経ったんだろう?分からないくらい泣き続けた私を彼はずっと撫でていてくれた。
大きくて優しい手に凄く癒されたんだ。


独りで居たかったけど、もし独りで居たらきっとこんなに穏やかな気持ちには成れなかっただろう。

心から感謝したい。


「ありがと。」


素直に彼に言った。まだ本調子じゃないけど、彼に負けないくらいの笑顔を見せて。


『随分素直じゃん。明日は雨かもな。』


ニヤケながらイヤミなこと言う彼に私も反撃。


「失礼な人ね。雨なんか降らないです。あなたと違って私はいつも素直ですから。」


『はぁ?俺の何処が素直じゃないんだよ。お前は頭も悪いんだな。』


「何ですって!」


立ち上がり叫んでしまった。

勿論店中の視線を集めてる。


恥ずかしくて静かに座って佐野さんを見ると、声を押し殺して笑ってる。

ちょっと誰のせいでって思ったんだけど、肩を震わせて笑ってる彼を見たら、私も思わず吹き出しちゃった。



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