君が、好き…?(短)
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「ユナ、ちょっといい?」
「んー?」
大抵の人は私を“ゆん”って呼ぶのに、浩くんだけはずーっと“ユナ”って呼んでくる。
侑奈(ゆうな)だから“ユナ”の方が普通っぽいけど、呼ばれ慣れていない分、なんだかその響きがくすぐったい。
「ここさぁ、計算が合わないんだよね」
「んーとね、ここの公式が違くて。こっちのやつでやると解けるよ」
「えーっ!例題はこっち使ってんのに?」
「これの応用がこれになんのよ。ここの計算が省けるの。だから、こうなる」
「おぉ、まじだ!分かったっ」
出された問題集にはびっしりと計算の跡があって、浩くんがどれだけ努力しているかがよく分かる。
もうすぐ大事なテストがあるのだ。進級のクラス決めに関わる期末テスト。
仮にも進学校のここで勉強ができないのは少し致命的。逆に勉強できる人はヒーロー扱い。
極端に言うと、がり勉メガネ君だってモテちゃうような高校だ。