君が、好き…?(短)
悠はこの学校じゃ珍しく、頭があまり良くない。体育以外の教科はまるでダメ。典型的な勉強嫌い。
2年に入ってこいつに懐かれた私は、担任に教育係を命じられてしまったわけで。
テストが近くなると、いつからかこうして放課後の勉強会に付き合わされるようになっていた。
「やれば出来る子なんだけどねー」
「じゃあ、浩くんが教えてあげなよ」
「俺じゃハルのやる気が出ねぇもん」
「私でも出てないじゃん」
無意識に出てくるため息を飲み込んで浩くんを睨むと「八つ当たり、」って言いながら苦笑いされた。
「なーにカリカリしてんの?」
眉間をトントン叩きながら笑う浩くんから顔を逸らす。
朱色に染まったグラウンドに練習する運動部の姿はなく、気持ち悪いくらいシンと静まり返っていた。
「田中、」
呟かれた名前に眉間の皺が深くなるのが分かる。
「行かなかったんだ」
「……浩くんっていつから私のストーカーになったの?」
「俺もたまに自分の情報網が広くて怖いよ」
我慢していたため息を盛大に吐いて教室に目を戻すと、彼は楽しそうににっこり微笑っていた。