とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
浮かせた蓋の隙間から周りを伺う。
『凄い…ビンゴだ…』
『おっと!驚くのはまだ早いぜ。
俺の計算だと、その真上に輸送車が停まるはずだ。』
その言葉通り、数分後車のエンジン音が聞こえた。
ほぼ予定時刻だ。
腕時計を確認しながら足音が遠のくまで待つ…
『よし!ミッションスタートだ!』
アランの声と同時に虎太郎は念願の地上に這い出ると、仰向けの状態で車両の下のハッチに手をかけた。
予想通り開かない。
ジェームズ・ボンドなら七つ道具で開けるだろうが、生憎そんな物は持ち合わせていない。
虎太郎はハッチに手を翳して小さく呪文を唱えた。
魔法陣が浮かび上がると同時にガンッ!という音してハッチが開いた。
そっと押し上げて輸送車に侵入する。
輸送車の中は幾つかの大型ケースが積まれており、これなら扉が開いても身を隠せそうだ。
『侵入した。』
『good job!!さすがだ!』
フードを深めに被ると虎太郎は息を潜めた。
数分後、扉が開くと同時に話し声が聞こえた。
『…だなんて、まさか思わないだろ。』
『襲えるもんなら襲えってんだ!返り討ちにしてやる!』
荷物を積み込む音がして、やがて扉の閉まる音が聞こえて静寂が訪れた。