とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
右京は「潤!」と叫ぶと黒髪の青年が現れた。
「あの車を止めろ。」
「御意。」
突然川が荒れだしたかと思うと一気に水柱が上がった。
それは生きているかのような動きで橋の上を這って行った。
輸送車と前後を走っていた車が水に押されて止まった。
『なっ…何が起きた!?』
ニックは揺れる船の中で『わからない!』と叫んでいた。
「虎太郎!」
右京がそう叫んだ直後輸送車の方から爆音が聞こえた。
「ちっ…逃がした!右京!」
右京は道路に氾濫した水に手を突っ込むと辺り一面真っ白な水蒸気で煙幕を作った。
…ふとチラッと上に小さな影が見えた。
右京は飛び上がるとそれに向かって思いっ切り回し蹴りを喰らわした。
道路から離れた採石所辺りで砂埃が上がるのをニックは唖然と眺めていた。
しばらくして『ターゲット確保』という右京の声が聞こえたが誰も反応出来なかった。