とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
刑事アンダーソン
自分のデスクを片付けながら、後輩達と挨拶を交わす。
初老のその男は警察に入って40年…刑事になって35年のベテランだった。
あまり期待されるような刑事ではなかったが、定年目前にして手柄を上げた。
『アンダーソン警部!』
そう言ってまた後輩が挨拶にやって来た。
『お疲れさまでした。
警部がいなくなると寂しくなります。』
『な~に…私がいなくても何も変わらないよ。』
『それにしても、先日の輸送車強盗事件!お手柄でしたね!!』
『…ああ…ありがとう。』
あの事件は定年1週間前に署に予告が来た事が発端だった。
定年間際ということもあり、事件を抱えていなかったアンダーソンが担当になったのだった。
『是非お話を聞かせて下さい!』
目を輝かせるその若い刑事にアンダーソンは話すのをためらった。
何せ自分にも未だに理解出来ないのだから…
『…天災が味方した…それだけだよ…』
アンダーソンはそう言ってダンボールに詰め終わった私物やファイルを持って立ち上がった。
彼はその答えに不満そうな若い刑事に穏やかに笑った。
『話したところで誰も信じないさ…
老いぼれの戯言としか思わないだろうよ。』
そう言い残してみんなに挨拶をすると署を後にしたのだった。