とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
アンダーソンが家に帰ると妻が出迎えてくれた。
『お疲れさま。さあ、ゆっくりしましょう。』
おっとりとした物腰の妻はあの事件の事を聞かなかったし、手柄を祝うこともしなかった。
ただ一言…
『あなたが無事で良かった。』
そう言葉をかけた。
そのせいか、食後に酒を飲んでいてつい聞いてしまった。
『お前はあの事件が天災によって解決されたと思っているのかい?』
『…あなたがそうだと言うのならそうなのでしょう…』
妻はそう答えた。
『…あれは天災なんかじゃない…
誰も信じはしないだろうがな。』
ポロッと本音が零れ、少し酔っているのだと彼は感じた。
しばらく黙っていた妻は静かにこう聞いた。
『本当は話してしまいたいんでしょう?』
『…そうかもしれん…』
『私で良ければ聞きますよ?』
アンダーソンはいつもの調子でおっとりとした言い方の妻に少し笑った。
『では酔っ払いの戯れ言として聞いて貰おうか…』
そう言って彼はあの日の出来事をポツリポツリと話し始めた。