とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
後ろの輸送車の上から何かが飛び出したような気がした。
運転手を振り返って『今のを見たか』と聞こうとして異変に気付いた。
『おい!!しっかりしろ!!』
運転していた警官は先程の衝撃で気を失ったらしく、呼びかけにも目を覚まさなかった。
止まらない車両に焦って視線を前に向けた。
前方の道の先に黒い何かが見える…
…なんだ…あれは…
そして視線を橋に移すと特大の水柱が上がり、うねりながらこっちに向かって来るのが見えた。
有り得ない光景に声も出ない。
…否、正確には声を出す余裕がなかったと言うべきか…
気付いた時には水柱が車両に襲いかかり、その衝撃で頭に鈍痛が走った。
薄れゆく意識の中で必死に外に這い出ると、どういう訳か辺り一面が霧に覆われていた。
痛む体を横たえて空を見上げた。
…私は死ぬのかもしれない。
そんな考えが頭によぎり、自然と目は天高く輝く太陽をとらえた。
太陽と重なって黒い何かがフワリと浮いて居るのが見えた。
逆光で輪郭がぼやけてハッキリ見えないが、端正な顔付きの青年に見えた。
ああ…お迎えが来たのか…
そう理解したと同時にアンダーソンは意識を手放したのだった。