とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
…ふと遠くの方からサイレンの音が聞こえた。
ハッとして起き上がるとまだ生きているのが分かった。
『…そうだ!!強盗は!?』
軋む体を奮い立たせ、横転した輸送車に近づいた。
輸送車は天井部分に大きな穴が空いている。
アンダーソンはその穴に手をかけて中を覗いた。
転がる大型のケースの間に30代位の男が横たわっていたのが見えた。
警官じゃない…コイツが犯人か…
反射的に手錠を取り出し気を失っている男に後ろ手に手錠をかける。
アンダーソンは急に力が抜けた様にその場に座り込んだ。
そして次に気付いた時は病院だった。
退院後、輸送車の護衛に付いていた警官らに話を聞こうと思ったが、みんな何も覚えていなかった。
輸送車を運転していた若い警官にいたっては、ポイントAを過ぎた辺りから記憶がなかったかの様だった。
話終えたアンダーソンはウイスキーを継ぎ足すと、一気に飲み干した。
『あれは天災じゃない…
故意に川を氾濫させたんだ。』
『…もしそうだとしたら、なんでそんな事したんでしょうねぇ…』
アンダーソンはその言葉に『え?』と間抜けな顔をした。
『だってそうでしょう?
そんな目立つ事しちゃって…
ふふ…慌ててたのかしらねぇ』
おっとりした妻の言葉に彼は黙った。