とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
確かに妻の言うとおりだ。
誰かが意図的にあんな事したのなら、それは何故だ?
アンダーソンはしばらく目を閉じてソファーに深く座るともう一度あの日の不可解な出来事を思い返した。
生き物のような水柱。
穴の開いた輸送車。
そして…
逆光の中に浮かぶ青年。
『あの青年の仕業か…?』
ポツリと彼が呟くと妻は穏やかに微笑んだ。
『…じゃあ、その子のおかげで犯人が捕えられたんですね?』
『ああ…そうだな…』
あれだけの惨事だったのに大した怪我人も無かったのも、彼のおかげかもしれない。
だけど、あの青年は別に強盗犯はどうでもよかったみたいだった。
第一、太陽を背にした青年は全くこちらに目を向けなかった。
何を追ってたんだろうか…
『さぁ、夜も更けた事ですし、そろそろ寝ましょう。』
『…そうしよう。』
何はともあれ、もう過ぎた事だ。
そうして、『明日から何をして過ごそうか』と考えながら、アンダーソンは床に付いたのだった。