とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
薄暗い店内の中には年代物の家具が並んでいるのが分かった。
ふと視界が遮られて顔を上げると、無表情なアジア系の男がこちらを睨んでいた。
男は扉を開き『何か用か』と右京に話し掛けた。
『こんな所に店があるなんて知らなかった…』
『…アンティーク家具や骨董品を扱ってる。
…見てくか?』
男は右京を招き入れた。
怒っているのかと思ったがそうでは無いらしい。
ゆっくり足を踏み入れ積み上げるように並ぶ家具の間を進んだ。
男は大きなコンテナから骨董品を出してショーケースに並べていた。
手にしていた綺麗な絵の描かれた急須を男は眺め、微かに目を細めた。
『…年代物だね…』
『ああ…昔の日本人が使っていたらしい。ティーポットだよ。』
『“急須”だ』
『…詳しいな…』
『こう見えても俺は日本人だ。』
そう言うと男は少し目を見開いた。
「こんな所で祖国の人間に会うとは思わなかった…」
「日本人だったのか。中国人かと思ったよ。」
「店主のクリス・宮下だ。父が日本人なんだ。」
「俺は黒崎 右京だ。よろしく。」
そう言うと握手を交わした。