とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
右京がクリスの店を再び訪れたのは、帰国する3日前だった。
久しぶりに来た右京にクリスは「よぉ」と相変わらずの無表情で挨拶をした。
「待ってたよ。右京くん。」
「右京でいいよ。何かいいものあった?」
「幾つか見繕っといた。」
そう言うとクリスはカウンターに色々並べ始めた。
見るからに高そうな宝石箱…
細かな彫刻が施されたオルゴール…
水晶で出来た小さなマリア像…
どれも素晴らしいものばかりだった。
「凄い…これ全部親父さんのコレクションか?」
「ああ。なかなかの年代物だぜ?」
「そこまで高いのは残念ながら手が出ないな~
ちなみにお勧めは?」
そう言うとクリスはロザリオを指差した。
「中世ヨーロッパ、ルネッサンス期の物だと聞いている。
純銀製だが、くすみもしてない。不思議だろ?」
「空気にあまり触れてなかったのかもな…」
そのロザリオを手に取ってみると微かに温かかった。
…念が込められてる?
「…気に入ったよ。これにする。」
「だと思った。」
クリスはちょっと笑うと「毎度あり。」と言ってケースに入れてくれた。
帰ろとしたところで「ああ、そういえば…」とクリスは右京を呼び止めた。