とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~


「そういえば師範は?」

「あぁ、おじいちゃんなら道場だよ。」


それを聞くと右京は疲れたと言っていたのに木刀片手に道場へと走って行った。




右京が道場を覗くと、丁度門下生が帰った後らしかった。


「師範。ただいま!」

「おお、右京!帰って来たか!」

「元気そうで安心したよ。

なぁ、手合わせしてくれないか?
まともに稽古してないんだよ。」


そう言う右京に師範は嬉しそうに目を細めた。





居間で右京が戻って来るのを待つ忍はまた落ち着きなくウロウロとしていた。


「なんだ、さっきっからウロウロと…

いい加減落ち着いたらどうだ?」


母だけでなく父にまでそう言われ忍は不機嫌そうに腰を下ろした。


結局右京が戻って来たのは1時間程してからだった。


「コテンパにやられた!」


そう言って師範と一緒に笑いながら戻って来た右京に叔母は優しく微笑んだ。


「部屋に荷物置いて来る」

「半分持ってあげる!」


嬉しそうについて行く娘を父親はつまらなそうな顔で見送った。


「忍は右京にべったりだな…」

「久しぶりだもの。あなた、邪魔しちゃだめよ?」


そう釘を刺されて不愉快そうに「ふん!」と鼻を鳴らした。



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