とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
就職活動
大学のキャンパスを歩きながら忍は溜め息を付いた。
「就職難とは聞いてたけど、今年もキツいなぁ~…」
「何社受けるの?」
「とりあえず15社。」
「少ないんじゃない?」
隣のセリが眉を寄せて「せめて20社くらい受けなさい」とダメ出しをした。
「妥協したくないもん…」
宗教学の教授に「自分の研究室に入らないか?」と言う誘いも受けたが、忍はキッパリ断った。
「しっかし、なんでまた記者なのよ…」
「真実の追求よ。
今の世の中は偽りだらけなのよ…」
出来れば海外へ行きたいと忍は考えていた為、国内の出版社への就職は考えて居なかった。
「でも外資系のとこだけでしょ?厳しいわよ~…」
「国内じゃ意味ないじゃない。」
「愛の力ですか~?」
忍は茶化すセリを小突いて軽く睨んだ。
季節はもうすぐ7月というのもあり、だいぶ暖かさが増して来た。
セリは着ていたカーディガンを脱いでカバンに引っ掛けた。
「で、愛しの右京様は何て言ってるの?」
「言ってない。」
「…話してないの?」
「うん。だって海外で働きたいなんて言ったら反対するじゃない。」
シレッとそう答える忍を見てセリは「平気なの?」と心配そうな顔をした。
「こういう事は事後報告の方が丸く納まるのよ。」
「知らないわよ~?」
「心配ご無用!なんとかなるわ。」
意外と頑固な忍の性格からして、何を言っても無駄と気付いたセリは「分かったよ。」と笑った。