とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
その拍子に何冊の本がバサバサと落ちてきた。
「…もう!何やってんの!」
忍は落ちてきた本に…否、自分自身になのかもしれないが少しムッとして独り言を言った。
散らばった本を拾い上げて目を落とした。
哲学の棚のはずなのに開かれたページには“グノーシス主義”という単語が目に付いた。
「これは宗教学の書籍じゃないの…」
“グノーシス主義”って確か地中海世界で勢力を持った古代宗教・思想…
裏表紙を開いて発行者欄を見てみると“イルミナティ出版社”と記載されていた。
「聞いたことないな…三流出版社かな…」
その本の内容が気になり、忍は借りて帰った。
夕飯後に借りた本を読んでみた。
内容はグノーシス主義を含む“反宇宙的二元論”についてや、秘密結社の存在の有無、そして“ヴィオニッチ手稿”や“死海文書”などの怪文書について書かれていた。
それらを信じる信じないは別として、忍は素直に面白いと思った。
忍は本にしおりを挟むと、出版社をネットで調べてみた。
「あった…元々はイギリスで出版された本なんだ…」
イルミナティ出版社は日本の出版社だったが、書籍はイギリスで発行されたものだと分かった。
この手の本は胡散臭くて読んだ事がなかったが、著者の見解はなかなか的を得ていて興味深いものだった。